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内観療法 ー日本で誕生した心理療法ー

内観療法 ー日本で誕生した心理療法ー 
2011年2月1日 
文責:榛木美恵子 [大阪心理相談センター・大阪内観研修所]
 現在、医学・心理学の分野で注目を集めている内観療法は、日本で誕生した内観法を原型とした心理療法である。
 この内観法(集中内観)を経験した人は、日本国内ではすでにのべ20万人を超え、海外では西洋を中心に8,000人を超えている。(注:「内観法」日本評論社) また内観療法としての活用は、近年、中国での発展が著しく、2010年4月から上海では保険適用となり、市民は内観を利用しやすくなった。現在、上海第二医科大学では毎月約30名に、実践されている(注:2011年1月榛木)。
 この内観法は中国より伝来(638年洛陽)した仏教思想を背景に、日本の風土・文化・時代背景の中から誕生した。内観法は「自己の歴史を見つめなおし、対人関係を見なおして、新しい自己を発見する方法」であるが、現在、悩みやストレスを軽減する方法として医学、心理学、教育、企業、日常生活の中に導入されて、人々の幸せに役立っている。
 世界中から注目されているこの短期心理療法としての内観は、今から約70年前(1940年)、吉本伊信(1916年~1988年)が体験した迷いや悩みから解放される修行法「見調べ」を改善して、現在の基礎が作られた。
 その後1954年、矯正教育界に導入され、再犯率低下に驚く効果を上げ、1960年代には全国の矯正施設(刑務所・少年院)30箇所で導入されるようになり、1062年には全国40箇所の矯正施設において内観実習者は30,000人を数えた。

再犯対象表

出所人員

 再犯人員

 再犯率

 一般の出所者

2,229名

1,340名

60.1% 

 内観実習しての出所

629名

191名

30.4%

 米国のノースウェスタン大学社会学教授、J. I. キッセはこうした矯正教育での内観の調査を行い、イギリスの雑誌「ニューソサエティ」に発表した。
 学校教育、生徒指導における内観は、1962年12月1日、大阪府立高校教員と府教委員合わせて28名が内観研修所を見学したことに始まり、1964年9月には埼玉県私立狭山ヶ丘高校ならびに茨城県私立水城高校、静岡県私立島田学園、1967年に岡山県私立山陽高校に内観が導入された。また1967年9月8日には四国4県私立学校職員総会で内観が講演された。
 内観の実践にともなって、心理学的研究もはじまり、1960年「臨床心理学からみた内観」日沖正常、「内観法への期待」柏木幸雄、1962年「内観法の心理学的課題」武田良二、1964年「心理療法としての内観」竹内 硬、等が次々と発表した。1965年には竹内硬(信州大学教授・当時)が国際心理学会機関紙「プシコロギア」に「内観とは何か」を発表、1966年モスクワで開催された第18回国際心理学会において佐藤幸治(京都大学教授・当時)が「東洋心理学の世界心理学への寄与」と題して禅とともに内観を世界に紹介した。
 医学の領域では1965年、精神科医・石田六郎が精神医学1968年6月号に「内観分析療法」と題し41症例の効果を発表したほか、岡山大医学部精神神経科 洲脇 寛は、1967年よりアルコール依存症に内観を導入した効果を「アルコール及び薬物依存に関する国際医学シンポジウム」で報告した(アルコール歴10年以上の重症患者54名に適応し、3年半以上再発しない50%の治癒効果。他の療法による治癒率は30%)。
 1977年9月には第4回国際心身医学会(京都)で「心身医学の治療における日本的アプローチ」と題して東大付属病院精神科医長・平井冨雄が報告、外国人医学者の注目をうけた。(1977年10月20日毎日新聞)
 このようにして内観は、医療、心理療法への導入が始まった。そして1968年頃にその基礎となる内観三項目が確立されて以降、よりシンプルな構造で各分野に発展するようになった。また1972年に「内観療法」(医学書館)、サイコセラピー・シリーズ「禅的療法・内観法」光文社(分担執筆“子供の内観”榛木)、また米国では1983年に“Naikan Psychotherapy”など内観専門書が出版されている。
 海外への内観の普及は、1961年沖縄(返還前)、1963年台湾、1976年ドイツ、1980年オーストリアと広がり、1986年オーストリア・ウィーンに、1987年ドイツ・ザルツブルグに、内観研修所が開設されたことで、海外での研修が可能となった。
 中国では、1993年、中日内観療法研修会が発足して、本格的な内観の研究が始まり、現在では3年に1度、国際内観療法学会が開催されている。今年(2011年)は甘粛省、山東省に続いて天津で国際内観療法学会が開催される予定である。また中国からは2004年より毎年、中国医師団が来日して、大阪内観研修所で集中内観研修会を開催され、面接者が養成されている。このようにして民間で普及していた内観は現在では短期心理療法として、医学・心理学の分野で大きく貢献している。
 内観の研修の方法は以下のような手順で行う。:
 1、研修項目:内観3項目(①対象者にして頂いたこと②対象者にしてあげたこと③対象者に迷惑をかけたこと)の観点から時系列に対象者を決めて(母・父・兄弟姉妹・祖父母・先生・上司・その他、生育史の中でかかわりの深い人)調べる。
 2、場所:一定期間内観ができる安全な場所
      ・指導者(面接者)が、定期的に面接に訪れることができる。
      ・集中思索できるよう、外部の刺激を物理的に遮断できる事(聴覚刺激・視覚刺激)
      <外部からの心理的刺激遮断を行なう(補助手段)>
 3、基本的合意と自発性:
      ・基本的ルールや前提条件を受け入れ、これに従う合意と約束で研修を始める。
 4、内観態度:基本的ルールを守る
      ・内観場所(法座)を自由に移動しない。
      ・外部との刺激遮断(テレビや携帯電話、読書などの禁止)
      ・面接者以外との交談禁止
 5、自力性
      ・面接は約2時間に1回の巡回面接で行なう。
 6、口頭での開陳
      ・内観テーマについて、調べた事を面接者に口頭で報告する(起立しない)。
 7、面接回数と面接態度
      ・面接頻度(回数):一日に7~8回の面接を行なう。
      ・態度:面接者は受容的な態度で面接を行なう。
 8、秘密保持
      ・内観面接者は内観中知り得た情報を他に漏らしてはいけない。(秘密厳守)
 内観法とは、自己理解、新しい自己発見の方法で、心のなかにあるこれまで生きてきたさまざまな記録、を深く思い出し、ありのままの自分の姿に気付いていく方法である。
 現在では、各地の内観研修所で一週間、屏風の中に滞在し、内観3項目によって自己検索を行なう(=自己を見つめる)方法である。これは自己の歴史の回想法であるが、精神分析における回想とは異なり、生育史の中から愛された経験を事実に基づいて思い出し、被愛の事実を再認識していく方法である。東洋的、日本文化から誕生した内観法は、ストレスによって破壊されている「共生」のこころを取り戻し、全人的な豊かさを回復させる方法である。
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