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学校におけるいじめとその解決

学校におけるいじめとその解決

文責:梶原成子 [カウンセリングオフィスSola]

いじめが原因と思われる自死事件の報道に、多くの方が心を痛めていることと思います。
悪質ないじめがどれだけ悲惨で、多くの人に深い傷を与えるものかは、外から見ている者の想像を超えるほど大きなことでしょう。
今回は学校でのいじめとその解決についてお話しましょう。

1.いじめとは
まず゛いじめ”とはどのようなことを言うのでしょう。
文部科学省は「いじめとは、当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているものとする」と定義づけています。
つまり、いじめは攻撃という行為のあるなしだけで判断するのではなく、行為を受ける側の気持ちや捉え方が大切だということです。
また研究者の立場から森田洋司は、「いじめとは同一集団内の相互作用過程において優位にたつ一方が意図的に、あるいは集団的に、他方に対して精神的・身体的苦痛を与えることである」と述べています。
こちらの方が具体的なイメージを描きやすいかもしれません。

2.いじめか、遊びか
国立教育政策研究所のいじめアンケート(いじめ追跡調査2007-2009)では、小学校4年から中学校3年までの6年間の間に9割の子供が「仲間はずれ」「陰口」「無視」などの被害経験はもちろん加害経験も持っているという結果が報告されています。
この結果からもうかがえるように、文部科学省の定義をいじめとするなら、誰でもがいじめっ子になり、いじめられっ子にもなっているわけです。
でもその多くは対人関係を学ぶ過程での、未熟さから来る行きすぎや間違い、敏感さから引き起こされるものです。
その中のごく一部が意図的に、集団的に、長期間に渡って、犯罪とも言えるような行為に発展するのです。
大津市立中学校におけるいじめに関する第三者調査委員会事件の調査報告書を見ても、被害生徒の苦しみが伝わってきて、どうしてそれを救えなかったのかなどと様々な思いがこみ上げてきます。

3.いじめの解決
欧米においてもいじめは学校における大きな問題であり、多くの方針や対策がたてられてきました。いじめについて詳しく知ることが、いじめを減らすことにつながるという仮定の下、いじめの調査や研究が行われました。
しかしこの20年それらの取り組みにも関わらず、今でもいじめは学校の大きな問題であり続けています。
その取り組みの多くはいじめに対する知識を学び、生徒への調査をして、いじめの状況の把握をし、その対策を考えるというものです。
でも時にいじめの問題を把握し、無くそうとすることが、学校の中に疑心暗鬼によるぎすぎすした関係を作り出すことにつながる恐れもあります。
それでは私たちはいじめという問題に対して、どうすれば良いのでしょう?何ができるのでしょう?
いじめの被害にあった方々から、相談を受けることがあります。
いじめは辛く苦しい体験であり、その及ぼす影響の大きさに胸が痛み、腹立たしさを感じるばかりです。でも同時に、友達のちょっとした一言に救われたこと、親が支えになってくれたこと、教師が理解してくれたことも同時に語られたりもします。それらがいかに暗闇の中の一筋の光になったかに心を打たれることもしばしばです。
つまり我々人間は時と場合によっては人をいじめる可能性を持った存在であると同時に、お互いに思いやり、励まし、支えあうこともできる存在でもあるものです。
私たちの目指すべき目標はいじめを無くすことではなく、その先にあるお互いが仲良く協力し合う関係なのではないでしょうか。
スペインでは次のような取り組みでいじめへの効果を上げています。
「スペインのSAVEいじめ防止プロジェクトでは゛共存”を彼らの取り組みの中心に置きました。彼らは゛共存”を゛連携、友愛、協調、調和、相互理解したいと思える心、他の人とうまくやっていきたいと思う心、対話、暴力を伴わない手段による対立解消の精神”と定義づけました。彼らはクラスに゛共存”を広げ、対人関係を改善することでいじめを著しく減少させることができました。(Ortega. Del Ray & Mora-Merchan. 2004)」(『学校で活かすいじめへの解決志向プログラム』より)
少人数の友達とだけの関係で固まるのではなく、クラス全体で意識的に協力し合い、話し合う活動をさせることで、クラス全体がお互いに支えあう仲間だという意識を高め、づ叔父に子どもたちもより良いソーシャルスキルを身につけることができ、結果としていじめが減少したとのことです。
このように問題を無くそうとするのではなく、生み出したい未来を作り上げるための取り組みをすることを゛解決志向”といい、個人や組織の解決に効果を上げています。
解決志向の基本はこの三つです。
・望んでいる未来について話す
・既にうまくいっていることを探す
・うまくいっていることをもっと続ける
私のクライエントが話してくれたように、いじめのそばにも友達の一言や親の支え、教師の力も存在するのです。
その小さいかもしれないけれど既にある思いやり、励まし、支えをもっと増やし、クラスに学校にそして家庭に広げていくことでいじめを減らすことの可能性が見えてくるでしょう。
大人が子どもたちを守るだけではなく、子どもたちが人と良い関係を作る力を身につけられるよう、私たちもそれぞれができることから始めてみませんか。

●参考文献●
『学校で活かすいじめへの解決志向プログラム―個と集団の力を引き出す実践方法』スー・ヤン著 黒沢幸子監訳 金子書房 2012

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