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大人の発達障害<アスペルガー症候群>

大人の発達障害<アスペルガー症候群>

文責:吉川加代 [新大阪カウンセリングセンター]

● はじめに
日常臨床の中で、次の様な人々に出逢う機会がこのところ増えている。例えば同僚らと社員食堂で昼食をとっていた時に、離れた席に座って一人で食事をしている最近離婚したという女性のことが話題になった。「どういう理由で別れたんだろうな」と噂しているので、自分が立って行って「どうして離婚されたんですか?原因はなんですか?」と聞いた。推察しているより、直に確かめるのが一番だと思っただけなのに、彼女や同僚に酷く怒られてしまった。「どうしてなのか」とA氏。職場の飲み会で上司に「君は本当によく頑張っているなあ。期待しているよ。けど、もう少し場の雰囲気を読んだ方が良いかもしれんなあ」と言われ「そんな訳のわからんものを読む暇があったら、国際経済情勢を読みます」と、返して呆然とされ「どうしてだろう?」とB氏。幼いころの思い出を語るうちに、幼稚園のクリスマス会で「サンタさんなんて、本当はいないんや!あんなん作り話や!」と、言い放ち、皆が泣き出すは、先生は慌てるは、一部始終を知った母には、きつく叱られるは、というC氏は、30代になった現在でも「間違ったことを言ってないのに、何で叱られなあかんのや」と、言い続けるのである。彼らは、ともに高学歴で、かなりの企業や研究所に勤めている人々であり、そして共に、勤務先でのトラブルを抱えて我々の元に、相談に現れたのである。彼らは、一様に「自分なりに、一生懸命やっているのに、思いもかけないことで何かを注意される。何を叱られているのか、わからない。そう言えば、もっと前から一人浮いてしまっている気もする」と、訴えるのです。

●自閉症スペクトラム・広汎性発達障害(アスペルガー)
以上述べてきたような人々は、アスペルガー症候群の特性に気づかれずに大人になり、社会生活を送るうちに、彼らに共通した症状ゆえの社会生活上の困難さと直面せざるを得なくなるのである。自閉症スペクトラム(Autistic Spectrum Disorder)の中のアスペルガー症候群(Asperger Syndrome:AS)が疑われるこうした人々は、知的障害がないがために、見逃されて大人になる。しかし、社会性やコミュニケーション領域に於ける対人関係の困難さを持ち(相手の感情などが読みにくく、場の雰囲気がわかり難く、自分の関心のある物事しか目に入らず、一つのことに囚われ続ける。。。など)社会不適応におちいるのである。

●自閉症スペクトラムの歴史
1944年にハンス アスペルガー(Hans Asperger)によって「自閉症が精神病質」として一群の報告がなされ、その後のカナー(Kanner)の自閉症論が有名になると共に、これらとの差異について多くの議論がなされた。1981年には、ローナ ウィング(Lorna Wing)らにより疫学研究の結果、アスペルガー症候群とカナー型自閉症を連結して考える今日の自閉スペクトラム(連続体)という概念が出来た。1994年にはDSM-Ⅳによって国際診断基準が定められたのである。これらの広汎性発達障害に位置づけられるのは、*言葉の遅れ、知的障害を持つ自閉症 *ADHD(注意欠陥多動性障害) *LD(学習障害) *ASD(アスペルガー)があり、ASDでもADHDやLDを併発している場合もあり、また時に統合失調症・気分障害・人格障害・不安神経症・強迫神経症などの疾病と間違われることもあり得るので、鑑別診断が大切になってくる。

●鑑別診断
診断方法としては、WAISなどの知的検査をはじめとする諸検査テストや、アスペルガー指数の質問表・丹念な成育歴・家族関係・現実の就労上の問題などを、本人や家族から徴集していくのである。ここでポイントになるのは、発達期から存在する「対人関係障害」「コミュニケーション障害」「イマジネーション障害」「変化への抵抗や固執性」「感覚の過敏さ、鈍感さ」などの把握である。

●自閉症スペクトラムの原因
数々の説が挙げられてきたが、最近は、親の養育態度などの心理社会要因によるものでなく、遺伝的要因や器質的要因などの生物学的、脳科学的なものによるという考えが主流になってきている。

●鑑別診断後の対応とその後の援助
医師からの診断により「やっぱり、そうであったか」とか「人生のこれまでの経緯の訳がわかって、良かった。まだ良くわからない部分もあるが、納得(腑に落ちた)」「こんな言い方は、おかしいかもしれないが、何故いつも自分1人が浮いていたのか、わかった気がする」といった反応がかえってくることが多く、驚かされる反面、早期発見と援助の必要性を痛感させられるのである。我々のところで行っているカウンセリングでは「内省して改善してもらう」というやり方ではなく、まずは「自分の特質を認める」ことから出発し、認知行動療法的に社会とのズレを一つ一つ洗い出し、その場面での問題点を取り上げ補っていくことで、援助していく。職場では、この傾向を理解してくれた上で、助言して支えてくれるキーパーソンを作るように勧め、会社側への説明も欠かさぬように配慮することも重要である。また、障害者職業センター・リハビリテーションセンター・ジョブコーチなどの支援資料も可能であるなどの、情報援助の説明も行う。因みに「またまた困りました。こんなときは、どうしたら良いでしょう。この私の判断で良いのでしょうか」という問い合わせがやってくることもあり、こういう問い合わせには直接的に「社会通念はこうである」と明瞭に伝えることにしている。

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