「私はオカシイのでしょうか？」
「最近物忘れがひどくて困っています。職場で何度も同じミスをおかしてしまい、この先が心配です。私はどこかオカシイのでしょうか？」。
そんな悩みを抱えた３０代後半の男性が私のもとに来られた。その方の主訴の背景や生育史を1時間ほどかけてお伺いしたが、どこにも病理的な要因は見当たらない。
そこで初回面接の最後に「あなたは何をすることがお好きですか？」と尋ねると、即座に「一人で旅行することです」と応えられた。「ほ～っ、旅行がお好きですか。では、旅行の計画でお忘れになるようなこともあるのですか？」という私の問いに、「いや、そんなことは一切ありませんよ！」と声高にキッパリ。
このとき私に閃いたものがあった。その方は少人数の職人的職場を３回ほど転々とされてきており、「同じミスをおかさない」ために必要な「手帳の使い方」というビジネス・スキルを、単に習得する機会なくして過ごしてこられた方だということを。
そうなれば事は簡単だ。次回の面接時で「手帳の使い方」を微に入り細をうがってレクチャーさせていただき、それを質問まじりで熱心に聞いておられた印象的な姿を見ての終結。
物忘れを「心の問題」に帰属させず、単なる「ビジネス・スキルの未学習」で片付けてしまう。こんな私という心理カウンセラーの方が、あるいはオカシイのかもしれませんね。
カウンセリング談話室 志村勝之
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